明示的フィードバックで３歳児の「言いまつがい」を直す　#10 幼児と外国人の日本語教育ラボ

「日本語ラボ」シリーズは、日本語教師の卵であるアコが、日々の学習した内容を振り返りながら、まとめています。日本語の学習者にも、読み物としてもお読みいただけるシリーズとして育てていきます。
# 10 初級クラスの教室活動_明示的・暗示的フィードバック編

ナメクジは、なめくじらの子供ではありません

「あ、なめくじらいたよー、なめくじら！」

３歳半になって、ボキャブラリは豊富になった一方で、いわゆる「言い間違い」もちょろちょろ出てくるようになりました。

息子は相変わらず、都会のわずかな土を見つけてはダンゴムシを探しています。

 

通園途中では、だいたいアリかダンゴムシかダニしか見つけることができませんが、一旦公園に行くと、たくさんの虫に出会うことができます。

モンシロチョウにベニシジミにアオスジアゲハ。
息子が虫に興味を持ち始めたので、私も図鑑でカンニング。

そして、ナメクジ。

「あ、なめくじら！！」
「なめくじらいたよ」

「な・め・く・じ・ら」の正体はこれ。
アンパンマンのキャラクターです。

ちなみに、
カタカナの「ナメクジラ」は、これ。
仮面ライダーのキャラクターです。

息子の頭の中では、ナメクジはなめくじらの子供か幼虫とでも思っているようです。

暗示的フィードバックでやんわり気づかせる

さて、この言い間違いをどうやって訂正するか。

まずは、息子のプライドを傷つけないよう、

「ナメクジね、ナメクジ」
と繰り返します。

これは、日本語教育でいう、
「暗示的フィードバック」
やんわりと言い換えて、
相手に間違いを気づかせる方法です。

が、この方法は通じません。
いつまで経っても
「なめくじら」といいます。

明示的フィードバックで間違いを指摘する

なんでだろうと思った時に、
たぶん、息子の頭の中では、
「ナメクジネ」
の「ネ」が「ラ」のように聞こえてしまっているのでは？

そう思い、
次は、
「ナメクジラじゃないよ。ナメクジ。ナメクジとナメクジラは違うよ」
と指摘しました。
こっちが、明示的フィードバック。
違うということをちゃんと伝えます。

すると、ナメクジとなめくじらは違うということはわかったようですが、
まだ、「なめくじら」「なめくじら」といいます。

図鑑にあたって、一緒に正解を見つけよう

うーむ、
ナメクジラのインパクトがでかすぎるのか。
確かに、私も未だに、
「土田さん」と「土屋さん」と「辻野さん」が
ごっちゃになっていて、
夫が、「土田さんと飲んでくる」というのですが、
あれ、あの方だったっけ？　それとも……。

まぁ、いっか。

一体誰と飲んでくるのか分からないまま、
「そうなのね」と空返事してしまったり。

で、そんないい加減な母親なので、
私もかなりの確率で言い間違いをします。

間違った認識がはなく、
本当に言い間違いなので、
言った本人も、
「あれ？　そんなこと言った？」
という状態なのですが、

そんなこんなで、私が何か間違うと、
「チ・ガ・ウ〜〜〜〜！！！」
と息子はムキになって怒ってきます。

えへへ。
で、息子からしたら、
ママこそが間違っているのではないか
という疑念がなかなか晴れません。

だからこそ、しばらくは、
ワラジムシを「ワラジムシ」と言っても、
ママは「ダンゴムシ」をいい間違えたのだと
散々怒っていましたが、

図鑑を「エビデンス」として見せると
ようやく、信じてくれました。

ふう。

ママも知らないことが沢山あります。
40歳にして、はじめて知ることが山ほどあります。

だから、「聞く」「調べる」「確かめる」ことに
謙虚にならねばと思うのです。

 

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廣升敦子（アコ）のプロフィール

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日本語教師、上級心理カウンセラー
宮城県出身、東京都在住。千葉大学で小中学校（英語）免許を取得後、教育専門紙の編集記者に。その後、フリーランスのリサーチャーとして、N=1のインタビューを続ける。我が子の成長や親の葛藤を綴ったブログ「コレ芝」でのエピソードは、中京テレビや日経MJ、朝日小学生新聞などで紹介。息子が2歳の時に始めた語句の詰め込み教育を通し、4ヶ月で800語の四字熟語を覚える。これに味をしめて、現在は日本語教師として外国人や児童に日本語を教えている。

 

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