musuko42

二百万円借りる

「オッカチャン、喜生の出生記念の事業ですがね、お金貸しておくんなせえテ」
相崎にゆくたびにおばあちゃんにたのんだと同時に、広島のおばあちゃん、広升健太おじさんたちにも借金をたのんでいた。
何がなんでも、勇者の園を建てたい。
喜生が生まれ、母ちゃんやおばあちゃんたちに囲まれ一日一日成長している間、父さんは、一人東京で、勇者の園実現のゆめを拡げ、借金申し込みにあけくれていたのだ。
五十一年四月十五日。喜生が生まれて二ヶ月余りがすぎた。父さんはきみと母ちゃんを迎えに行った。そのとき、おばあちゃんは、二百万円を貸してくれた。
東京に帰るとき、駅までタクシーをたのみ、足の治療を受けている静江おばあちゃんも、
一緒に病院にゆくからと家を出た。
途中、病院の前で、静江おばあちゃんとヨブ子おばあちゃんは降りた。
「ヨシオをたのみますよ」といいながら大粒の涙を見せたおばあちゃん。
走り去る車窓から振りかえると、ヒョコンヒョコンとあるく静江ばあちゃんをささえてヨブ子ばあちゃんが、ゆっくり病院の玄関を入っていった。
“親孝行しなければいけないがなー”
親とは本当にありがたいものだな……。

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