自称詞「ぼく」「わたし」か固有名詞か二人称「お兄ちゃん」か #26 幼児と外国人・帰国子女の日本語教育ラボ
「日本語ラボ」シリーズは、日本語教師であるアコが、日々の学習・実践した内容を振り返りながら、まとめています。日本語の学習者にも、読み物としてもお読みいただけるシリーズとして育てていきます。# 26 語彙編
4歳、人称の概念が身についた! 「こうちゃんじゃなくて、お兄ちゃん」
息子に妹ができました。抱っこしたり、読み聞かせしたり、いいお兄ちゃんっぷりを発揮しています。
そうして1か月が経ち……。
第二子の娘「陽(よう)」を連れて、息子の保育園に行こうとした時のこと。
ねえ、陽ちゃん。『こうちゃんの保育園、行こうねぇ』
陽ちゃんに言うときは、「お兄ちゃん」。ママが言うときは「こうちゃん」。陽ちゃんに言ってるから「お兄ちゃん」って言うんだよ。
何気ない会話でしたが、わたしは涙が出るほど感激したのです!
それは……。
年少者の視点で家族の名称が変わる!
息子に、年少者の視点に立って、家族の呼び名が変わるという日本語のルールが身についているから!
日本語は、一番年齢の低い人の視点に立って、家族を呼ぶと言う暗黙のルールがあります。
例えば、
母や義母(息子にとっては祖母)は、息子の前では私のことを「ママ」、夫のことを「パパ」と呼びます。息子の立場からすると「ママ」「パパ」だからです。同じように、私が母を呼ぶ時も、「バーバ」となるわけです。
こうしたルールは、誰に教えられる訳でもなく、自然と家族が複数人になった時点で共有されます。そのルールを息子も自然と踏襲していた。発言する人と、聞いている人の立場をきちんと理解していた……という訳です。
自称詞「ぼく」からニックネーム「こうちゃん」に戻った訳
さて、2〜3歳の頃には「ぼく」と言っていた息子ですが、4歳をすぎ、再び自分のことを「こうちゃん」と呼ぶようになりました。これはなんででしょう〜!? 正確なことはわかりませんが、おそらく。
仮説1)私が息子のことを「こうちゃん」と呼び直すようになった
妊娠が発覚してから、息子のメンタルケアのために、意図的に「ママは『こうちゃん』が好きよ」と言うようになった。このことで、再び「自分」=「こうちゃん」とラベルを貼り直したのではないか。
仮説2)息子が明確に他と区別し、自己主張するようになった
保育園でも、「ぼく」と言う子が増えてきた。そこで、他の子の「ぼく」と区別するために、あえて「こうちゃん」と呼ぶようになったのではないか。
仮説3)赤ちゃん返りの現れ?
これまで自分のことを「こうちゃん」と呼び、月齢を重ねるにつれ、2〜3歳で「ぼく」と呼んでいたのですが、再び「こうちゃん」と名前で呼ぶことで、少し赤ちゃん返りをしたいのではないか。
というようなことが理由なんじゃないかと思っています。
文化学園長野専門学校の守秀子さんは、「幼児期の自称詞使用に関する実態調査」で、年少・年中くらいで自称詞「私」「ぼく」を使うようになると明らかにしています。
これによると、だんだんと「◯◯ちゃん」から「ぼく」を使うことが成長の証とも言えますが、果たして息子の内面にどんな変化があったのでしょうか。聞いてみたいと思います!
廣升敦子(アコ)のプロフィール
日本語教師、上級心理カウンセラー
宮城県出身、東京都在住。千葉大学で小中学校(英語)免許を取得後、教育専門紙の編集記者に。その後、フリーランスのリサーチャーとして、N=1のインタビューを続ける。我が子の成長や親の葛藤を綴ったブログ「コレ芝」でのエピソードは、中京テレビや日経MJ、朝日小学生新聞などで紹介。息子が2歳の時に始めた語句の詰め込み教育を通し、4ヶ月で800語の四字熟語を覚える。これに味をしめて、現在は日本語教師として外国人や児童に日本語を教えている。
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