3歳の言い間違いを音声学的に分析するとコスパの高いことがわかった #15幼児と外国人の日本語教育ラボ
「日本語ラボ」シリーズは、日本語教師の卵であるアコが、日々の学習した内容を振り返りながら、まとめています。日本語の学習者にも、読み物としてもお読みいただけるシリーズとして育てていきます。# 15 音声学
「カブトムシ」も「ゾウムシ」も死ぬの?
最近の我が家。たくさんの生き物が家族に加わりました。
まずは、カブトムシの幼虫が30匹!
息子の中で、むくむくと「命」という概念が育っています。
すると……。
ママ、カブトムシってシムの?(死ぬの?)
うん、死ぬよ
「ママ、ゾウムシは何色でシムの?(死ぬの?)」
「白だよ」
「ママ、こうちゃんもシムの?(死ぬの?)」
「人はみんな、死ぬよ。だから、長く生きるように、たくさんご飯を食べて寝るんだよ」
「へーえ、じゃあ、ザリガニもシムの?」
「……」
最近、死生観を持つようになった息子。少なからず、誰しも、何でも「死」は訪れ、だからこそ、「生」を大切にするというメッセージを伝えています。
さて、とても重要で重いテーマですが、息子の言い間違いがかわいらしい!
「死んだ」とは言えるのに、「死ぬ」とはいえず、「シム」と言っています。
なぜだろう?
日本語の音声学的に、分析してみたいと思います。今回は、ニッチでマニアックなお話です!
「死ぬ」と「シム」と発音する理由〜調音点の違い〜
「ぬ」と発音すると、鼻に音が響いて聞こえますね。そして、舌は歯茎にくっついています。
一方、「む」は、舌は動かさず上唇と下唇がくっついています。
その前の言葉、「し」は、のどに近い側の舌に力が入って、口の中が狭くなっています。
ということは。
「し」→「ぬ」だと、
舌を前に動かして舌先を歯茎にくつけますが、
「し」→「む」だと、
舌を動かさずに、口を閉じれば発音できます。
(※わかりやすいように図を簡素化し、表現を平易にしています)
「たんぽぽ」と「たんぽこ」と発音する理由〜調音点の違い〜
そして、もうひとつ、最近の言い間違え。
「ママ、たんぽこ咲いてたよ」
「たんぽぽ」というには、「ぽ」→「ぽ」を繰り返す必要があります。つまり、唇を閉じて開いて、閉じて開いてを2回繰り返します。
ですが、「ぽ」→「こ」なら、唇を閉じて開くのは1回。「こ」は舌の奥に力を入れれば発音できます。
「なくて」を「なくちぇ」と発音する理由〜破裂・破擦、調音点の違い〜
「ゾウじゃなくちぇ、キリンだよ」
息子は、「てがみ」とか「テントウムシ」は言えるのに、「なくて」がうまく発音できません。
「く」→「て」だと
舌を前に動かして舌先を歯茎にくつけ、2度、息を溜めて吐き出しますが、
「く」→「ち」→「え」だと
息を溜めて吐き出すのは「く」の1回だけで済みます。
日本語の発音は、コスパ化している
その昔、「花」は「ぱな」(pana)と発音されていたと言います。今でも沖縄の一部には、この方言が残っているそうです。
「は」は、「pa」→「fa」→「ha」と変化してきました(厳密にはこの表記ではありませんが、わかりやすいようにローマ字を当てています)。
これが、なぜ変化したかというと、やはり発音が簡便化したという説があります。
「ぱ」と発音すると、唇を閉じて一気に開いて、という力が加わります。
「は」は、息を吐き出せば発音できます。
このように、日本語は楽に、簡便に、脱力化に向かっているということ。
まとめ 3歳の言い間違いはコスパによるもの
息子の例を見ると、舌を動かしたり、力を加えなくても発音できる音に代替しています。コスパのいい発音なんですね。やがて、舌や唇の筋肉が発達すれば、「たんぽぽ」「死ぬ」「なくて」と発音できるでしょう。
なので、この言い間違いは期間限定。かわいい言い間違いをウンウン、と聞いておきたいと思います。
……と、マニアックに見てみました。
それもこれも、「死ぬ」ことは逃れられないから。だからこそ、一日を、そして小さな変化や感情をこうして残しているわけです。
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廣升敦子(アコ)のプロフィール
日本語教師、上級心理カウンセラー
宮城県出身、東京都在住。千葉大学で小中学校(英語)免許を取得後、教育専門紙の編集記者に。その後、フリーランスのリサーチャーとして、N=1のインタビューを続ける。我が子の成長や親の葛藤を綴ったブログ「コレ芝」でのエピソードは、中京テレビや日経MJ、朝日小学生新聞などで紹介。息子が2歳の時に始めた語句の詰め込み教育を通し、4ヶ月で800語の四字熟語を覚える。これに味をしめて、現在は日本語教師として外国人や児童に日本語を教えている。
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