命をつないだ11月25日
あのね、こうちゃん。これから、こうちゃんがどうやってこの世に生まれてきたかを書くことにするね……。
4時間の帝王切開手術の末、小さな命が誕生!
こうちゃんが生まれたのは、2014年11月25日。東京港区にある虎ノ門病院の手術室でした。36週6日目の8:30に手術室に入り、その1時間後、ようやく、「おぎゃー」という声が聞こえたよ。その声は、心拍や電子音が無機質に鳴り響く手術室に、じんわーりと響き渡った。
私の横にいた助産師は、その小さな命を抱いて、わたしの顔の脇に。
そのときは、「かわいい」とは、正直おもわなかった。ただただ、ほっとして「命」の存在を確認したことで精一杯。ごめんね。ママ、必死だった。
ただ、涙がつぅーっと頬を濡らしてた。
部位と体重を確認し、そして「安心」の涙があふれた
そして、目がふたつ、鼻と口はあるか……。喜びの前に部位を数えてた。
ひととおり、江ちゃんの顔を観察し、助産師にこう聞いた。
「体重は……どれくらいですか」
開口一番に「体重かよ」って、がっかりするかもしれないけど……。出産まで江ちゃんの体重が増えること、ただそのことだけを頼りにがんばってきたから許してね。だって、もしかしたらその半分の大きさで生まれてたかもしれなかったから。だから、一般的には未熟児には分類されない2500g以上あることがわかって、すごくほっとした。
「そうね、抱いた感じだと2800gくらいかも。これから測ってみますね」
そう聞いて、心から安堵した。涙がわっと溢れた。
自己血を体内に戻し、麻酔が切れ大きな悲鳴を……そして閉腹へ
こうちゃんは、病院の別フロアに待つパパやバーバのもとに向かい、その後、新生児室へ。あとから聞くと、こうちゃんがいつフロアに戻ってくるか、みんなでエレベータをじっと眺めては、通過するたびに肩を落としてたんだって。そして、こうちゃんに対面したとき、「かわいい」「かわいい」って顔を見合わせて喜んだんだって。ママも、その輪に混じりたかったな。
そのとき、ママはまだ手術室に。
ママの顔を覗き込む執刀医の顔がとっても真剣で、ママも緊張してつばを飲み込んだよ。
「貯蔵してた血液を至急もってきてください」
手術がはじまり2時間半。出血に備えて、あらかじめとっておいた自己血をとりよせ、体内に送り始める。
そして、どうやら麻酔がきれたらしい。
ずしりと石をお腹に置かれたような痛みで悲鳴をあげ、 こみ上げる胃液を飲み込む。
「痛いです」
「はきそうです」
嘔吐してもよいように、口元には底の深いプラスチックケースが置かれる。ところが、吐き出そうとしても何もでない。昨日から何も食べていないし、吐く力も残っていなかった。
だから、「かわいい」なんて思う余裕はなかったんだ。正直、早くこの場を逃げ出したかった。
そして気づくと、手術は終わっていた。
それが、こうちゃんがこの世に生まれた日の話。
やがて、こうちゃんは「クソババア」なんて悪態をつくかもしれない。夫のタケちゃんも、よそ見をすることもあるかもしれない。そうした姿をそばで見ていられるのなら、それは私が元気でいることの証。
けれど、万が一、私に何かあって、こうちゃんに伝え忘れてしまうことがあったらいけないから……。出産のことを書き留めておくね。
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