五ビックリ
このパーティーのため、静江、ヨブ子両おばあちゃんが上京した。
一夜は、父さんたちの所(つまり勇者の園一号館)に泊り、もう一夜はもと母ちゃんが住んでいたアパートの都おばちゃんの所に泊る計画だった。おばあちゃん達はやって来た。
目のギョロリとしたキツイ感じの中田ハナばあちゃんにまず、一ビックリ。あいさつを交して、二階にあがろうとしてその階段の急なのに二ビックリ。
六畳間、三尺の押し入れの襖がこわれていて、たおれかかったのに三ビックリ。
便所に行きたくなったが、ハナばあちゃんのいる一階六畳の畳の間の隣りが、便所だと知らされ四ビックリ。
お隣りの家が赤提灯のおでんやで、夜はにぎやかに軍歌の歌がはじまるときいて五ビックリ。
静江おばあちゃんは泊る気はおろか、出かかったオシッコも止るほどおどろいて、都ちゃんの所に行きますテ。と予定を変更。
三鷹まで送ってゆく車の中で、
「ハナさんはこわそうなババさんですね、美津子も苦労しますね、階段が急で子どもが生まれたら危ないですテ。お便所が畳の間の隣りで臭くないですか、襖がこわれてましたが直らんですかね、隣りが飲み屋で環境が悪いですネ」と五ビックリを解説。
「美津子がかわいそうで、セツネエですテ」を連発。
「ヨシロウチャンが生まれたらすぐ柏崎によこして下さいネェ、海はあるし、家も広いし、庭にブランコもつくりますがね。広い家が全部ヨシロウチャン一人のものですがね」と連発。静江おばあちゃんには東京での狭い生活、ことのほか、中田ハナさんとの生活は受け入れがたいことのようであった。
にぎやかなパーティーが終ったあと、みなさんからいただいた、お祝いが五十万円になった、と知らせると、
「兄さんの徳ですテ、事業が認められたんですね」とそのときだけはニコニコうれしそうだった。